ひな祭りの夜。2026年3月3日の夜に皆既月食が起こります。月は、東の空で18時50分に欠け始め、20時04分に皆既食となります。日本全国で見られるのは2025年9月8日以来です。皆既月食は東ローマ帝国の滅亡に関係したと言われています。
1453年、1000年の歴史を誇った東ローマ帝国の首都コンスタンティノープルは、オスマン帝国のメフメト2世(1432 - 1481)によって包囲されました。三重の鉄壁「テオドシウスの城壁」に守られたこの都市は難攻不落とされていましたが、メフメト2世は当時最新鋭の「ウルバンの巨砲」を投入して壁を粉砕。さらに、海上の封鎖を避けるために船を陸路で運ぶ「山越えの艦隊」という奇策を繰り出し、守備隊を窮地へ追い込みました。
この極限状態の中、人々の精神にトドメを刺したのが「皆既月食」でした。当時の街には「満月がある限り街は落ちない」という予言がありましたが、5月22日の夜、昇ってきた月は無残に欠け、不気味な赤色へと染まりました。これを「神の拒絶」と受け取った守備兵の士気は失墜し、絶望が街を支配しました。5月29日の総攻撃により、ついに帝国の息の根は止められました。最後の皇帝コンスタンティヌス11世は一兵卒として戦場に消え、中世は幕を閉じました。
この陥落は、ルネサンスの加速や東西交易路の遮断に伴う大航海時代の幕開けなど、世界のあり方を根底から変える大きな転換点となりました。